新感覚荘厳オーラADV『ムダにそうごんっ!!』(通称・シリアス荘厳) 荘厳ED1

437 名前:その1 投稿日:2006/08/05(土) 16:01 ID:H1Ju9+L60
>>359から
ちなみに前スレ943からのとか今までのシリアスなのとかから繋がってる感じで頼む
俺は前スレ943氏ではないが


その日、荘厳さんは学校に来なかった。
昨日自分があんなことを言ったせいなのだろうか。
「もう俺に話しかけないで」
我ながら、なんて酷い言葉だろう。あのときの荘厳さんの顔が、頭から離れない。
一瞬絶句した後の、悲しそうな笑顔。何もかもをあきらめたような笑顔。
見ているこっちが泣きたくなるほど、美しく、しかし胸がつまるような笑顔。
それとも、そうみえたのはただの自惚れなのだろうか。
彼女にとっての俺が、彼女の兄が言うようなものだとは、どうしても思えない。
いや、違う…正確に言うなら、思いたくなかった。
そうだとするなら、俺は彼女を傷つけることしか出来ないから。



438 名前:その2 投稿日:2006/08/05(土) 16:02 ID:H1Ju9+L60
荘厳さんのいない教室は、文字通り華がない。
いつも流れている優雅なBGMも、輝くような眩しさも、ない。
寂しいと思う。心にぽっかり穴が開いたような寂しさ。
それは果たして、荘厳さんのオーラに、俺が魅せられているからなのか。
それとも、純粋に荘厳さんがいないことに対する感情なのか。自分でもわからなかった。
友「荘厳さん1人いないだけで、随分雰囲気がかわっちまうもんだな…」
男「…ああ」
友「お前もなんかしまりがねーし。見舞いでも行ってやったらどうだ?」
男「……」
行けるわけがない。昨日あんなことを言ったばかりで。
しかしそんなこと、こいつに言えるわけがなかった。
言った時点で、俺はきっとこいつやクラスメイトや教師や、もしかしたら地域住民にも殺されかねない。
それほどまでに、彼女は誰もを魅了して止まない何かを持っている。
そして、俺も…
男「悪い、俺先帰るわ」
友「え、あ、ああ…」
力のない足取りで教室を後にする。背中に、友の視線を感じた。
良かったんだ、これで。心の中で自分に言い聞かせた。
荘厳さんは強い人だ。俺1人が何か言ったから学校を休むなんてこと、あるわけがない。



441 名前:その3 投稿日:2006/08/05(土) 16:03 ID:H1Ju9+L60

「…よぉ」
校門のところに立っていたその人は、俺を見つけると憎たらしいほどの笑顔で片手を挙げた。
顔を合わせることが出来ない。俯いたままその横を通り抜けようとした俺の腕を、荘厳さんの兄は無言で掴んだ。
男「…離してください」
兄「……」
荘厳さんの兄は何も言わない。
思わず睨みつけるような視線を向けると、先ほどの笑顔とはうってかわった、怒りとも憐憫ともつかない表情でただこちらを見つめていた。
言葉に詰まる。何を言えばいいのかわからない。
下校する生徒たちが、好奇の視線を向けているのがわかった。
男「……離し」
兄「荘厳が学校を休んだのは、お前のせいだ」
男「っ!!」
いきなり、直球できやがった。
言葉を返すことなど出来るわけがなく、押し黙る。
荘厳さんの兄は、それ以上何も言わなかった。ただ黙ったまま、俺から視線を外そうとしない。
なにがしたいんだ、こいつは。
そんなことを俺に伝えて、なんになる。謝れっていうのか?
俺に、何を求めている?俺は、ただの男子高校生だ。
荘厳さんのような人と、そもそも交われるような人間じゃないんだ。
思ったことは、そのまま口から溢れていた。
男「……俺に、どうしろって言うんですか」




442 名前:その4 投稿日:2006/08/05(土) 16:03 ID:H1Ju9+L60

兄「何?」
男「関わるなって言ったかと思えば、恋人になってくれとか…俺に、一体どうしろって言うんですか!?」
大声で叫んだ俺に、通行人の視線が突き刺さった。
変な誤解を与えたかもしれない。しかし、そんなことを気にしている余裕はなかった。
兄「……どうして欲しいんだろうな」
ぽつりと、荘厳さんの兄は吐き出すように呟いた。
俺の腕を掴んでいた手に、力が入ったのがわかる。
お互いに、何かを堪えていた。泣きたいのか叫びたいのかよくわからないもやもやを、どう言葉にしていいのかわからないでいた。
兄「……お前のせいだけじゃない。俺のせいでもある」
男「…え?」
兄「俺は、知らなかったんだ。わからなかったんだ。荘厳の中で、お前がどれだけ大きい存在か」
腕は痣が出来るほどの力で掴まれていた。
しかし、脳が痛みを感じることすら出来ないほどに、様々な感情が俺の中で渦巻いていた。
男「荘厳さんが……俺、を?」
兄「……荘厳はな、知ってたんだ。お前の気持ちも、俺の考えも、全部」
男「!!!」
鈍器で、思い切り頭を殴られたような衝撃だった。
知っていた?荘厳さんが、俺がどんな思いで彼女と接していたのかを?
男「……嘘だろ? だって、荘厳さんは何も言わなかった。いつも笑顔で、いつも輝いてて…」
兄「知ってたんだよ。それでも、何も言わなかった。いや、どれだけ傷ついても、何も言えなかった」
男「…言え…なかった?」
この人の言っていることが理解できない。
俺と話しているときの荘厳さんは、どんな表情だった?
笑顔だった。凛々しかった。輝いていた。
傷ついていたなんて、嘘だろ?
俺が、もうすでに彼女を傷つけていたなんて、嘘だろ?



443 名前:その5 投稿日:2006/08/05(土) 16:04 ID:H1Ju9+L60

男「どうして…」
兄「聞くのか? わかるだろ……お前の側にいたかったからだよ」
男「……」
兄「お前が堕ちても、側にいてくれればいい。対等じゃなくても、側にいてくれればいい」
男「っ…な…」
兄「昨日、荘厳がそう言った」
今度こそ、嘘だと叫びたかった。荘厳さんがそんなこと言うわけない。
そんなこと……
兄「信じられないか?」
言葉に出来ず、小さく頷くことしか出来なかった。
兄「だったら、自分で確かめるんだな」
荘厳さんの兄は、そう言って俺のポケットに何かを突っ込み、踵を返した。
俺はそこで、やっと腕を掴まれたままだったことを思い出した。
真っ赤な手の痕が、そこにくっきりと刻まれている。
それを、数秒間じっと見つめて、ようやく痛みを覚え始めた。
ずきずきとした痛みが走るたびに、ぐちゃぐちゃになっていた頭の中が、だんだんと何をすべきかを理解し始める。
ポケットに触れると、そこに入れられた鍵がちゃりちゃりという音を立てる。
俺は、彼が向かったのとは逆の方向…荘厳さんの家に向かって、歩き出した。



447 名前:その6 投稿日:2006/08/05(土) 16:19 ID:H1Ju9+L60

学校を休むなんて、いつ以来だろう。ずる休みなんてしたのは、もちろん生まれて初めてだ。
散々泣いて、泣いて、泣いて…今は、少し落ち着いた。
カーテンを閉め切った、薄暗い自分の部屋のベッドに寝転がって、ただぼんやりと天井を見つめていた。
お父様もお母様も、今は家にいない。さっきまで家にいたお兄様も、つい先ほど出かけたようだった。
静寂が支配する空間に、1人。いつもなら寂しさを感じるけれど、今はそれが心地よい。
前日に泣き疲れて十分な睡眠はとっていたが、しかしまた、瞼は重みを増してきた。
このまま寝てしまおう。
寝ている間は、何も考えなくてすむ。
せめて夢の中では、と思いかけて、しかし起きたときの絶望を思い、すぐに打ち消した。
夢は見なくていい。ただ、なにも考えたくない……
悲しい願いとともに、目を閉じた。



448 名前:その7 投稿日:2006/08/05(土) 16:19 ID:H1Ju9+L60

そのまままどろみに堕ちかけたとき、唐突に鳴り響くインターホンが私のそれを妨げた。
けれど、起きようとは思わない。
悪いけれど、居留守を使わせてもらおう。泣きはらした酷い顔で、来客を迎えることは流石に出来ない。
もしかしたらお兄様が帰ってきただけかもしれないという希望的観測の元、私は無視することを決意した。
耳障りなインターホンはすぐに鳴り止み、今度は玄関の開く音と、階段を上る足音が聞こえてくる。
やはりお兄様が帰ってきただけだと安心して、再び目を閉じた。
足音は私の部屋を通り過ぎて、その奥にあるお兄様の部屋へと向かう…という予想に反して、私の部屋の前で止まった。
続いて控えめなノックの音が聞こえる。
荘厳「…今は、お兄様と話すことはありませんわ」
なるべく強い口調で、そのノックを拒否した。昨日の夜の言い争い以来、お兄様と一言も会話を交わしていない。
ドアの向こうにいるお兄様は、それでも再びドアをノックする。
荘厳「……」
今度は無言で、それを拒絶した。本当に、今更お兄様と話すことなんてなにもない。
お兄様から言われることも、何もない。
男「……俺だ」



449 名前:その8 投稿日:2006/08/05(土) 16:20 ID:H1Ju9+L60

ドアの向こう側から聞こえた声は、思っていた人物とは大きく違っていた。
予想外の自体に、驚いて言葉を出すことも出来なかった。
そして、気付く。これはきっと夢なんだ。
私は、神様を少し恨んだ。いくらなんでも、このタイミングで男様の夢を見るなんて。
男「荘厳さん…開けてくれなくてもいいから、俺の話を聞いて」
夢にしてははっきりと通った声で、男様は言った。
私はベッドから上半身を起こして、言うとおりに彼の言葉に耳を傾ける。
男「さっき、君のお兄さんに会った。荘厳さんが学校を休んだのは、俺のせいだって言われた」
荘厳「!! そんなこと…」
ありません、とはいえなかった。実際、私がこうしてベッドに寝ているのは、彼の言葉が原因でもあったから。
男「……俺は、怖かった。荘厳さんを傷つけるのが」
荘厳「……」
男「それに、荘厳さんを傷つけて、自分が傷つくのも怖かった」
 「俺は弱いから、その両方に耐えられなかった。だから、逃げようと思った」
 「でも…俺はもう、散々荘厳さんを、傷つけてたんだよな」
彼は、そう言って乾いた笑いを漏らした。
自嘲的な響きを持ったそれは、私の胸にも痛みを走らせる。
ドアをはさんだ沈黙は、しばらく続いた。
男「……俺は、荘厳さんが好きだ」
荘厳「!!!」



450 名前:その9 投稿日:2006/08/05(土) 16:21 ID:H1Ju9+L60

…あぁ、やっぱり夢だと、私は落胆する。
彼が、こんなことを言ってくれるはずがない。それでも、胸が高鳴るのを抑えられない。
男「ずっと、悩んでた。俺の気持ちが、荘厳さん自身に向けられたものなのか、それともただオーラに魅せられてただけなのか」
 「オーラに魅せられて、荘厳さんを崇めて…それなら、ますます荘厳さんを傷つける。そう思った」
 「でも、オーラだろうがなんだろうが、荘厳さんに魅せられたことは変わんなくて…くそっ、なんていえばいいのかわかんないけど…」
言葉が纏らないのか、男様はそこで言葉を切った。
私はすぐにでもドアを開けたいと思ったけれど、そうすると夢が覚めてしまうようで、出来なかった。
男「……多分、俺はこれから、またたくさん荘厳さんを傷つける」
 「俺にとって荘厳さんは、まだ手の届かない人で…でも、それでも、俺も側にいたいと思うから」
 「荘厳さんをどれだけ傷つけても、側にいたい。エゴかもしれないけど、そう思ってる」
 「…その代わりってわけじゃないけど、俺は、君にならどこまでも堕とされてもいい」
荘厳「…男様…」
涸れたと思った涙が、またこぼれてきた。でも、これは昨日の涙とは違う。
うれしくて流れる涙は、初めてだった。
荘厳「…でも…私は…」
あんなに酷いことを考えていた。
たとえ男様が堕ちることになっても、側にいてくれればいい、なんて、狂ったような考えを持っていた。
きっと、それは男様も知っている。お兄様から聞いているはずだから。
男「…俺は、うれしかったよ。荘厳さんがそんなに思ってくれてたなんて、思ってもみなかったから」
荘厳「…私は…私は…」
男「もう一回、言うよ。俺は、どれだけ荘厳さんを傷つけることになったとしても、荘厳さんの側にいたい。」
 「荘厳さんになら、俺はどこまでも堕とされてもいい」
 「……それでも、俺に応えてくれるなら…ドア、開けてくれ」
彼はそう言って、沈黙した。



451 名前:その10 投稿日:2006/08/05(土) 16:21 ID:H1Ju9+L60

私は、恐る恐るベッドに右手をついて、床へと足を下ろした。
まだ夢は覚めない。
恐る恐る、一歩一歩、ドアへと近づく。手が震えた。足も震えている。
もう、男様は何も言わなかった。でも、ドアの向こうに確かにいる。なんとなく、わかる。
震えたままの手で、ドアノブへと手を伸ばした。
まだ覚めないで。まだ…
ガチャリという音を立てて、ドアノブは回った。
男「…荘厳さん」
荘厳「男様っ!!」
思わず、抱きついた。
男様は、確かにそこにいた。体全体から温もりを感じる。
その温もりが、これが現実だと、はっきりと告げていた。それでもまだ、信じられない。
男「荘厳さん…」
彼の手が背中へと回った。私も、抱きしめる手に力を込める。
それに応えるように、彼も私を強く抱きしめた。
痛いくらいの抱擁。しかし、それで私はようやく、今の現実を信じることが出来た。
男「ごめん、荘厳さん、ごめん…」
荘厳「謝らないでください…私も、あなたをたくさん傷つけてしまったから…」
それ以上は、お互いに言葉にならなかった。

帰ってきたお兄様に男様が蹴られるまで、私たちはずっとそうして、抱きしめあっていた。


















482 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2006/08/05(土) 18:38 ID:H1Ju9+L60
保守ついでに

荘厳「男様、喜んでくれるでしょうか…」
兄「…早いな。何作ってるんだ?」
荘厳「あらお兄様。今お弁当をつくってましたの」
兄「…2つあるのはなんでだ?」
荘厳「1つは私の分で、もう1つは…」
兄「…(俺の分とか?)」
荘厳「男様の分ですわ」
兄「…そうか」
荘厳「はい! でも男様に喜んでもらえるか、心配で…」
兄「…(そりゃ、お前の弁当は重箱か高級懐石のごとく見えるだろうから大丈夫だろ、言わないけど)」
荘厳「あ、そろそろ行かないと…」
兄「おお、気をつけてな」
荘厳「はい!!」
兄「………」

兄「……ちくしょう……」
兄「ちくしょぉぉぉぉぉ!!!!!」



485 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2006/08/05(土) 18:50 ID:IPB1ZsE80
>>482
今俺の中で兄が若本ヴォイスになった。
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by SouGons | 2006-08-06 20:37 | 荘厳さん


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